屋島・豊島旅行記 1日目
屋島と豊島へ一泊二日の旅行をしてきました。
屋島、というのは香川県高松市にあります。
名前の通り、屋根のような台形の地形が特徴的です。しかし名前と違って島ではなく、四国本土と陸続きの場所です。ひょっとして昔は島だったのでしょうか。
台形の山の山頂には四国八十八か所巡りの総本山の一つ、屋島寺があります。
たぬきが多い!(たぬきの写真を撮りそびれた)
びっくりするぐらいたぬきの置物(?)ばかりです。鳥居の奥にお稲荷さんがちょこんといるだけ。
少し話は脱線しますが、日本では各地で「きつねに化かされた」話が残っているそうです。数年間に聞いた話を思い出しながら書いているのは曖昧なところや不正確なところがありますが、ご容赦ください。
きつねに化かされた話はそんなに昔のことではなく、戦後10年くらいまではどこに行っても「私はきつねに化かされてこんなことがあった」「近所のおばさんが化かされたらしい」などの話がそこらじゅうで聞けたそうです。
その後高度経済成長に突入に、人々の生活スタイルや生活環境が変わったからか、豊かな自然がなくなってきつねもいなくなってしまったのか、1960年代以降はきつねに化かされた話がなくなったそうです。
さらに面白い話があって、ほとんどの地域で「きつね」なのに、四国では必ず「たぬき」に化かされるんだとか。
古事記とかに載っているような話ですが、四国のきつねが神様に怒られて四国を追い出され、「本州とつなぐ橋ができるまで戻ってくるな」と言い渡されたため、四国にはきつねがいなくてたぬきに化かされた話しかないそうです。
本州とつなぐ橋=瀬戸大橋などができてからは、四国でもきつねを見かけるようになったんだとか。まさか本当に神様との約束を守っているわけじゃないよね・・・
この話と屋島寺のたぬきが繋がっているのかどうか分かりませんが、気になるのでもっと調べてみたい。
また、屋島は源平合戦の場としても有名です。
平家物語の『扇の的』、中学生のときに古典の授業で何度も暗誦させられたなぁと懐かしくなりますが、那須与一宗孝がひいふっと弓を射った場所が屋島です。ピクトグラムがかわいいですね。
山を下りて続いて訪れたのは「イサム・ノグチ庭園美術館」
イサム・ノグチは晩年庵治(あじ)という良質の花崗岩がとれるこの場所にアトリエを構えて制作していました。NYとイタリアにもアトリエがあって行き来していたそうです。
イサム・ノグチ庭園美術館は、そのアトリエや住居のようすをそのままに残し、アトリエで制作された完成・未完成の作品がともに展示されています。
イサム・ノグチはここで制作をし、NYに移ってすぐに病気で亡くなったそうです。だからここに帰ってくるつもりで道具などを残しており、それがほぼそのままの形で展示されているので、いまにもご本人が帰ってきそうな緊張感で満たされています。
石が持つ人間よりもずっとずっと長い歴史に敬意を表し、彫ることで生き生きとした躍動を与えていました。
加工が大変な素材であるからこそ、作家の思いがそのまま石に投影されているようです。
イサム・ノグチの住居や庭は伝統を継承しつつ、前衛的。張りつめた緊張感はあるものの、何時間でもそこにいたくなるような居心地の良さがありました。
何時間でもいたかったけれど、この美術館は完全ツアー制で終了の時間も決まっています。事前予約制で定員があり、予約方法はなんと往復はがきでの申し込み!!!
この時代になぜ?と思い、スタッフの方に伺うと「ノグチが制作していたころの空気を残すことが大事だと思っているので、たくさんの方が自由に入るとそれが保てなくなってしまうと思います。みなさんが出た後、全て掃いて綺麗にしてから次の方をお迎えしているのですが、それも時間を自由にするとできなくなってしまうので・・・。予約の方法ははがきのほかに電話やインターネットでするといっぱいになったときに先着順にするのが難しくなってしまうからです。海外のお客様にはメールで対応していますけど」といった答えが返ってきました。
スタッフのみなさんのイサム・ノグチやこの美術館に対する熱い思いが言葉の端々からびしびしと伝わってきます。
来館者数では決して評価できない美術館としての誇りを感じました。
そのスタッフさんに教えていただいて、お昼ご飯は山田家さんといううどん屋さんに行きました。
続いてジョージ・ナカシマ記念館へ。
家具デザイナーのジョージ・ナカシマの人生を追ったパネルと制作された家具が展示されており、体験コーナーでは実際に座ったりすることができます。
森林学を専攻していた経緯もあり、ジョージ・ナカシマの木という素材に対する熱さは並々ならないものです。それぞれの木が持つ固有の特性を活かした家具を作っていますが、決して木のことだけを考えたわけではなく、使う人が心地よい作りをしています。
展示を見ているだけで「座りたい!」という衝動に駆られる椅子に初めて出会いました。展示物は座ることはおろか触ることもできませんが、体験コーナーでは実際に座ってみることができました。
人間工学に基づいて、椅子の高さや腰かける深さを決めたのでしょうか。座った途端身体がすっと馴染むようで、座面が固いはずなのにとても座り心地が良かったです。一度座ったら、もう立てない笑
これぞ User centered design だよなと思いました。
石と木に正面から向き合った2名の作家の思いに触れて屋島をあとにしました。
続いて豊島へ。
全てが檸檬づくし!!!
部屋に使われている布は豊島産の檸檬で草木染をしたもの。
ご飯には全てのメニューに檸檬が使われています。
お風呂では湯船に檸檬を浮かべて入ります。
日中見れる作品は、鑑賞者2名がカップルになってイヤホンガイドをつけます。その音声に従って行動していくというもの。
最後に指示されるのは「ほほ檸檬しなさい。」
ほほ檸檬とは、2人のほっぺたで檸檬をはさみ、写真を撮ること。その写真をハッシュタグをつけてインスタグラムに挙げればそれが作品となる。
作品自体は所謂アートの文脈で批評するのは難しいと思いました。やってみた感想は、2人でちょっと恥ずかしい、楽しいアトラクションのような感じ。
インストラクションアート、参加型アート、ネットアートなどと言えなくもないけど、無理にアートの文脈に載せると本質が見えづらくなる。
檸檬ホテルを始めるきっかけとなったのは瀬戸内国際芸術祭2016ではありますが、芸術祭後ほとんどの作品が撤去されたり、一時的にcloseしたにも関わらず、檸檬ホテルは存在し続けています。
オーナーさんはご夫婦で豊島に移住されています。ホテルを営業するにあたって、島の人たちの交流や協力が不可欠でしょう。豊島には貴重な宿泊施設ができたことで、お客さんの導線や時間の使い方も変わります。
そして豊島の美味しいものを食べる。
暮らしの基本は食べること・寝ることだと思っていますが、そこを深めていく施設が檸檬ホテルというわけです。所謂アートよりも、暮らしに根差した実践と言えると思います。