直島レポ② というか感想
瀬戸内国際芸術祭2016夏会期が始まりました!
早速作品を見てきました。
まずは直島の宮浦にあるギャラリー六区で展示されている丹羽良徳さんの作品「歴代町長に現町長を表敬訪問してもらう,2016」です。
※ギャラリー六区では春・夏・秋とそれぞれ個展が開かれます。春会期については直島レポ①を参照。
直島町には、かつて村だったころも含めて16人の歴代村長さん・町長さんがいらっしゃるのですが、その方々に17代目である現町長を表敬訪問してもらうというプロジェクトです。もっというならプロジェクトそのものをドキュメンタリーのように映像に収め、展示したものです。
昔の町長さんと現町長さんを会わせるため、複数の霊媒師が登場します。昔の町長さんの霊を呼び寄せてもらうんですね。
映像作品は約1時間ありますが、霊媒師さんに交渉に行くところ、歴代町長さんのご遺族に説明に行くところ、霊媒師さんを介して歴代町長が現町長を表敬訪問しているところの映像が重層的に流れていきます。
作品の概要はこんなところです。
私は霊とか神の存在を信じる性質なので、割とすんなり作品を見ることができましたが、それでも、言葉を選ばずに言えば霊媒師さんに対して「胡散臭いなぁ」と思う側面もありました。作家の丹羽さんご自身も「半信半疑」だと仰っています。
おそらくこの作品を見た人の多くは信じて良いものか否かのせめぎ合いというか、自分の立ち位置の揺らぎのようなものを感じるのではないかと思います。
しかし、やはりこの作品の面白いところは故人との交信を試みていることにあると思います。
しかも何の血縁関係もない。でも「町長」という立場では繋がっている存在というのは近いような、遠いような存在です。
私がいま生きているのは親、祖父母・・・と辿っていった先祖のおかげであることは言うまでもありませんが、日頃意識することはないし、まして血縁関係のない人だったらなおさらです。
もっと身近なところで言うと、いま私が暮らしている部屋は何年もいろんな人が代わる代わる住んできた場所ですが、さかのぼることはほとんどできません。
いま生きている時間軸が断絶されつづけて、自分の目の前のほんのちょっとしか見ていない、見ることができないことに気付かされます。
また、歴代町長さんは現在の直島の姿に、そしてこれからの未来の姿に100%賛同しているわけではありませんでした。詳細は省きますが、「たくさんの人が来るのは良いことだけど、昔の姿が無くなってさびしい」というわけです。
瀬戸内国際芸術祭の出品作品のなかで、現状に批判的なことを言っている作品は少ないと思います。
というか、こういう芸術祭とかって主催者側がお金出してアーティストが作品作れるわけだから、なかなかそういうことは言いづらいし、「地域が元気になる」とか「たくさんの人が関わる」ということで綺麗にまとめられがちな側面があります。
でも、故人の本音というかたちであったり、霊媒師というアートワールドにとっては少し外れた存在(ヨソ者)を介したりするこで、批判や毒も昇華できるのかと思いました。
作家の丹羽さんは「触れたことのない価値観にどうやって触れるか、という試み」だと仰っていました。
だから作品を観終わったときに「これは美術なのか?」という疑問を抱かずにはおれませんでした。プロジェクトの内容自体は所謂美術とはかけ離れていると思います。
美術以外の価値の尺度でプロジェクトを進行しつつ、表現手法においては美術の枠組みの中で行う、とでも言いましょうか。
ギャラリー六区の外観はこんな感じ。ネオンとか電光掲示板がかっこいいです。
映像は全編日本語・英語の字幕付きでしたが、「霊媒師」の訳が「medium」であることを初めて知りました。