小豆島―坂手レポ
瀬戸内国際芸術祭の春会期最終日に行ったのは小豆島の坂手というところです。
直島の本村港から直行で坂手に行く便があります。
直島(宮浦)―小豆島(土庄)間のフェリーは片道1,200円なのに、直島(本村)―小豆島(坂手)間は片道2,000円もします。
高いっ!
坂手港というのは関西からの玄関口で兵庫の三宮の方と連絡しています。だから直島や四国方面から行くのはちょっと面倒で、だから高いのかな、と思いつつ本村港に行きました。
すると、高い理由が他にもあることが分かりました。
こちらがその船の外観です。
黒地に黄色のラインがかっこいい。
船の座席には「ビートたけし」のサインと、
ビートたけしさんとヤノベケンジさんの写真が飾られていました。
後述しますが、坂手にはヤノベケンジさんの作品と、ビートたけしさんとヤノベケンジさんの共同制作の作品があり、坂手の象徴的な作品となっています。
このかっこいい船はヤノベケンジさんがデザインした「バルカソラーレ」という船だったのです!!!
船に揺られること約1時間、坂手港に到着するとさっそく出迎えてくれました。
ヤノベケンジさんの「スター・アンガー」
トゲトゲのミラーボールはこんなに天気のいい日に見るとまぶしく目を射ます。龍とともにゆっくりと回転し続けている、坂手港のシンボルです。
フェリーのチケット販売所にもヤノベケンジさんによる壁画があり、
芸術祭や地域のインフォメーションセンターである「ei」の前にもヤノベケンジさんのサンチャイルドの姿がありました。
一現代アーティストがここまで地域を象徴するような存在になっているのはすごいなー。
こちらの作品は「壺井栄生誕地 お花畑プロジェクト」の様子です。
「二十四の瞳」などの作者である壺井栄さんの生誕地がもともと空き地になっていたのをお花畑に変え、真ん中には壺井栄さんと同時代を生きた樹齢100年のオリーブが移植されました。
お花畑のすぐそばには、井戸を使った作品がありました。
八木良太さんの「Kaleidoscope」という作品です。
中を覗くとこんな感じ。肉眼で見るとあんまり分からないけど、写真で見ると万華鏡みたいで綺麗です。
どうして井戸を使った作品なんだろう。
この井戸は本物なのかな。
この地域は井戸を使っていたのかな。
なんてことを思いながら歩いていると見つけました。
使われているのかは分かりませんが、ありました。井戸。
この地域は水不足になりがちなので、井戸水を頼りにしていたということです。井戸端会議なんて言葉もありますが、地域の重要な文化の一つなわけです。
こちらは井戸の文化を始め、坂手という地域の象徴的な作品です。
ビートたけし×ヤノベケンジ「アンガー・フロム・ザ・ボトム 美井戸神社」です。
ビートたけしさんとヤノベケンジさんはテレビ番組の出演がきっかけで知り合い、共同制作を始めました。
ビートたけしさんが構想して、ヤノベケンジさんが具現化するそうです。
二人の手形も刻まれています。
実際の古井戸を使っています。
人間が古井戸を埋めたら怒って神様というか、化け物が出てきたという設定で、瀬戸内国際芸術祭2013のときには怒りを鎮めるための祭礼まで開かれたそうです。全長が8mあります。結構な迫力です。
2014年には地元有志の人たちによって祠が建てられ、新しい地域の神社、お祭り、ご神体として親しまれているそうです。
神社なので、ちゃんと御浄財もあって、維持管理費に充てられるんだとか。
いま、私たちの身近にある神社とかお祭りって昔から当たり前にあって、新しくできるっていう場面になかなか出会えるものではないと思います。
芸術祭がきっかけとなって新たな文化が芽生えていることの壮大さを感じます。
もちろん、ビートたけしというものすごく著名な人が関わっているっていうことが、地元人たちにとっても大きな魅力であり、誇りになっているんでしょうけど。
集落の中を歩いていると、こんなものも見かけました。さすが。
続いての作品が展示されているのは、坂手物見台という、まぁ古い納屋ですね。
結構ぼろい感じです。
こちらで展示されているのは、山口情報芸術センター(YCAM)のバイオラボによる地域リサーチの様子です。(これが見たくて坂手まで来たようなもん)
2週間かけて坂手周辺をフィールドワークして、そこで植物などを採取しています。
いやー、芸術祭の展示とは思えない光景(笑)
バイオテクノロジーってあんまり馴染みがないし、難しそうって思うけど実はものすごく生活に密着したものなんですね。
小豆島はお醤油も特産なんだけど、お醤油とか、味噌とか、お酒とか、全ては微生物の活動によって作られるもので、れっきとしたバイオです。
酵母を使ってパン作りもしたみたいですね。
一連のリサーチを通しての気付きをまとめたもの
その中の一つがとても印象に残ったので引用します。
「『培養』という言葉の英訳を調べると、『culture』という言葉だった。培養するというのは、育むことであり、耕して文化を生み出すことでもあるのだな。」
そういえば、藝術の「藝」という字には「耕す」という意味があるそうです。
お家でできるKITCHEN BIOのための道具も展示されていました。
よくお世話になるAJINOMOTOのコンソメ。これは酵母エキスになるそうです。
理科の実験でよく使ったこまごめピペット。実際に手に入れるのは大変そうだけど、お魚の醤油差しならいける!
YCAMの展示は尖っているだけでなくこのような親しみやすさもあるからとても楽しい。
物見台からの風景は最高でした。
海と山がとても近くて、その間にギュッと集落が密集しています。
密集しすぎて迷路みたいな道です。
荒神社には、
またしても八木良太さんの作品が。
蝉の抜け殻が留まっているイヤホンからは、時折蝉の鳴き声が聞こえてきます。
海の近くにあるこちらの作品は、うつゆみこさんの「fish farm house」です。
この写真で分かるかなー。実は全て魚とか、イカとかの海の生物でできているんです!!
強烈!!!!
最初に行ったインフォメーションに戻りました。
「ただいま文庫」といって、一時的に坂手に訪れたアーティストが坂手に絵本を送っているそうです。
2階は劇団ままごとさんがやっている喫茶ままごとです。
劇団ままごとさんの公演は夏会期にあるということです。
いただいたのはにゅうめん。500円。
さすが小豆島、オリーブが載っています。さっぱりしていおいしかったです。
おお、店内にもサンチャイルドが!
小豆島は大きな島で、坂手以外のいろんな地域で作品が展開されています。島内はバスに乗って移動可能です。
1日乗車券は1000円。普通に乗る場合は距離に応じて150~300円でした。
この日は時間の都合上、他の地域には行けずに帰りました。
他の作品の多くは夏会期や秋会期も見れるし!!
最後に土庄港でフェリーに乗って、チェ・ジョンファさんの「太陽の贈り物」を鑑賞。
また来ます!