沙弥島レポ
瀬戸内国際芸術祭の会場の一つ、沙弥島は、島といいつつ陸続きで行くことができます。
かつては島だったそうですが、埋め立てられています。
基本的に春会期のみしか展示されません(一部ずっと展示される作品あり)。
JR坂出駅から、バスで20分ほど揺られると辿り着きます。
瀬戸大橋が四国につながるところに位置し、瀬戸大橋が臨めるとても良い景色のところです。
そんな眺めを見られる最高の場所にひとつめの作品がありました。
藤本修二さんの「八人九脚」
野外彫刻、というかベンチですね。ここに座ってボーっと海を見てると何時間でも過ごせそう。
すぐそばには瀬戸大橋記念館。
ものすごく立派な建物です。
あまりたくさん写真はとっていないですが、かなり充実した展示で、瀬戸大橋ができるまでの苦労や、あの大きな橋を作るためにどれほどの技術を要したかが分かりやすく展示されていました。
いまでも海の航路は充実しており、フェリーなどはたくさん運行していますが、やはり陸続きでないことで苦労することも多かったようで、瀬戸大橋は人々の祈願だったということです。
これで入場無料とは・・・
瀬戸大橋とは関係ないけど、香川ではよく見かけるポスター。
要潤最高です。
そしてすぐそばにはまだまだ見どころが。
こちらは東山魁夷せとうち美術館です。建築は谷口吉生です。
谷口吉生建築といえば、水を使っているイメージがありますが、ここでは使っていません。なぜなら目の前が海だから(たぶん)。
海と反対側の入口はこんな感じ。
谷口吉生建築はシンプルで凛とした佇まいが大好きです。
この日は堂本印象の展覧会があっていました。アヴァンギャルドな日本画家。
京都にある堂本印象美術館にも行きたくなりました。
展示室を出ると、海を臨むカフェスペースがあります。
向こうに見える作品は・・・
ジティッシュ・カラットさんの「Rippled Sky for Hitomaro」
防波堤の先に木(?)があって、数分おきに木の枝から水が出てきます。
沙弥島に残る柿本人麻呂伝説ともかけてるみたいですが、正直作品のコンセプトはよく分からなかった・・・。
こちらは、ターニャ・プレミンガーさんの「階層・地層・層」です。
花崗土(香川でよく採れるらしい)をもった小さな丘。
ぐるぐる登ることができて、頂上はとても眺めがいいです。でも意外と急斜面なので足元には注意ですね。
沙弥島の漁港は小さいながらも現役です。
海に通じる入口(?)には明らかに邪魔そうな石があります。
これは、理源大師という方がこの地で生まれたときに、その胎盤やへその緒を埋めて石で蓋をしたという伝説が残るものだそうです。
いまでも触るとお腹が痛くなるという言い伝えがあるので残してあるそうです。
こちらは沙弥島海水浴場にある、五十嵐靖晃さんの「そらあみ〈島巡り〉」です。
写真があんまりよくないけど、横から見るととてもカラフル。
沙弥島とその周辺の5つの島で島の人たちとワークショップをして作ったものだそうです。
この日はとても天気が良くて、海沿いが気持ちいい。
この作品は秋会期には本島に巡回していきます。
そして後ろを見ると海の家が登場。
実はこれも作品で、藤山哲朗+冨井一級建築設計事務所による「沙弥島・西ノ浜の家」です。
屋上にのぼって海を眺めることもできるし、島でとれるワカメを使ったわかめうどんとか、おでんとかも食べられます!
が、タイミングを逃して食べられなかった・・・。
砂浜を横切った先にある万葉会館では、蓮沼昌宏さんの「12島の物語 回遊式アニメーション」という作品が展示されていました。 この塔みたいなものが瀬戸内国際芸術祭の会場となっている各島を表していて、床が瀬戸内海だそうです。
そしてこの塔は各島にある灯台をイメージしているんだとか。
つまり鑑賞者は海の上をさまよいながら一つ一つの島の物語に触れられる仕組みになっています。
で、灯台の上にはなにがあるかというと、パラパラマンガです。 もう、子どもも大人も夢中になってみてしまっていました。
パラパラマンガのストーリーはよく分からなかったけど、それぞれの島で見たものとかを表現しているんだと思います。
瀬戸内国際芸術祭で全ての島を巡ることはとても難しいです。ただでさえ広域なのに、フェリーの時間とかがあるので、かなりちゃんと計画を立てて、それでもいくつの島を回れるだろうかって感じです。
だからこの作品をとおして、疑似的にも瀬戸内海を周遊できるのかな。なんて思います。
ナカンダ浜のすぐそばには、旧沙弥小・中学校があります。
ここでは神戸芸術工科大学沙弥島アートプロジェクトが展開されていました。
大地の芸術祭などでも廃校を活用したプロジェクトはたくさん行われていますが、こちらは大学と連携しているようですね。
「三つの赤」というテーマで6人の作家の作品が展示されていました。
中山玲佳さんの「Las Islas ―しま・しま―」
現地の子どもたちと一緒に作ったものだそうです。
さくまはなさんの「完熱の唄 海原に浮かぶ瀬戸の太陽」
漁業で使う網が描かれていますが、なんと坂出特産物の金時みかんの果汁を用いて描いたものだとか。
戸矢崎満雄さんの「空飛ぶ赤いボタン」
地域の人だけでなく、全国の人から集めた赤いボタンと白いボタン(床)のインスタレーション。
よく見るとゆらゆらしています。
しりあがり寿さんの「赤いネジ」という作品。
やっと学校らしい雰囲気を見たな、と思えました。古い机や本、リレーのバトンなど懐かしい学校の備品が無造作に散らばっている空間にその記憶をとどめようとするかのように赤いネジがぐるぐる回っていました。
が、ネジの回るモーター音がずっと聞こえてて、なんだかなぁ、という印象でした。
かわいひろゆきさんの「ハレの日、金時への道」
この床の白い物、全て塩です!!
埋まっている瓶は、地域の親子と一緒に金時人参(坂出特産品)を育てて、それをピクルスにしたものです。
最後の作品はナカンダ浜に設置してある、藤山哲朗さんの「赤い窓の回廊」です。
このナカンダ浜は柿本人麻呂が立ち寄って歌を詠んだという砂浜です。
この旧沙弥小・中学校では、えのきCafeという、香川の郷土料理などを地元のおばちゃんたちの手づくりでいただけるカフェもあります。
が、速攻で売り切れるそうなので、ここでも食べられませんでした。
こちらの写真はワークショップで作った縄文土器的なもの。沙弥島では縄文時代や弥生時代の遺跡も発掘されている歴史深いところです。
うーん、沙弥島はとてもいいところだったし、一つ一つの作品は面白かったけど、なんとなく物足りない印象でした。 なんというか、「これって沙弥島で展示する意味あるのかな?」と思ったり、よくよく作品の解説を読むと沙弥島、あるいは坂出ならでは素材を使っていても、作品からのインパクトがあまりないかなって思ったり。
最近、地域アートに対して懐疑的になっているから、そんなふうに斜に構えて見てしまうのか・・・。