カレーライスを一から作る
先日、「カレーライスを一から作る」というドキュメンタリー映画を見ました。
武蔵野美術大学の関野吉晴教授がゼミ生による授業の一環でカレーライスを作りました。
どれくらい一からかというと、
野菜や香辛料は、種から。
お米は田んぼを開墾するところから。
鶏肉は、雛から。
塩は、海水から。
器は、土から。
一つのものを根源まで突き詰めると、世界が見えてくる。
ああ、なんて私は世界の狭いところ、薄っぺらい領域しか見ずに生きてきたんだろう。
普段スーパーで当たり前に手に取る人参はどこから来ているのか。
この映画で恥ずかしながら初めて知ったのですが、世の中で販売されている種の多くは、次の種=子孫を残さないように品種改良されたものが多いのだそう。
「そうしないと種屋さん儲からないでしょ?」と関野は笑いながら言う。
このゼミではわざわざちゃんと種を残す種を買いに遠くまで足を運んでいました。
土を耕して、畝を作って、種を植えるわけですが、なかなか思うように育たない。
すぐ隣の畑ではすくすく育っているので、農家さんに聞くと化学肥料をちょこっと撒けばあっという間に育つと教えられる。
このゼミでは化学肥料を使うのはルール違反。だけど、ほんのちょっと撒くだけで変わるなら使いたい。という葛藤が起こる。
そんな葛藤をいくつも乗り越えて、やっと一杯のカレーライスを食べることができる。
世界を知るために、いまは様々な便利な手段があるし、海外を旅することだってできる(現に関野自身は「グレートジャーニー」で世界中を旅してきた)。
だけど、だけど、身近なものの根源を辿ること、当たり前に存在するものをあえて自らの手を動かして作ることも、こんなにも世界を知る手立てになるとは。
土をいじっている学生の姿に触発されて、私も最近ハーブを育て始めました。