top of page

物・語 近代日本の静物画 感想

福岡市美術館で開催中の「物・語 近代日本の静物画」という展覧会を観てきました。

「静物画って、机の上に果物とか載ってるような絵でしょ。なんか古くさい感じだし、静物画ばっかり扱った展覧会なんて楽しいのかなー・・・」っていうのが観に行く前の正直な気持ちでした。

まぁタイトルにあるように「近代日本」=明治~大正期の作品群が中心だったので古いことには間違いない。

でも、静物画は単に目の前のモノを描いたつまらない作品、ではなく、紐解いてみるとすっごく奥深くて面白いんだ!という発見に出会えるのがこの展覧会でした。

よくある展覧会で目にする光景ですが、全体の構成が章立てになっていて、各章のはじめに学芸員の方が書いた説明があります。でも、その説明ってちょっと長くて難しい。

美術館の展覧会というものは基本的に学芸員による研究発表の場であるため、専門用語とかちょっと難しい表現があったりするので当然のことではあるのですが、私のような素人が読んでも要領を得ないことがしばしばあります。

あるいは、書かれている内容に固執してしまい、「なるほどこういうことなのね。」と、書かれている内容と作品を見比べて「正しい見方」を分かった気持ちになることも。

この展覧会では、各章の説明のあとに一言、「謎1:何を描くのか?」「謎2:どう描くのか?」などと書かれており、作品を見ていく上でその答えを鑑賞者自らが考えることができる構成になっていました。そして最終的に答えを提示するわけではなく、あくまでも見ながら考えていくためのヒントを提供してくれているわけです。

冒頭に書いたように、静物画の見方なんて全然分からない!と思っている私のような人には大変ありがたい。

静物画とは決して机の上に果物が載っているとは限らず、さまざまなものが題材として選ばれたこと。

目の前にあるものを写実的に描くことに留まらず、セザンヌやピカソなどから新しい表現方法を吸収したり、画面構成を工夫したりすることで絵画表現の可能性を追求していったこと。

などなど、静物画の奥深さの一端にふれることができました。

「物・語」という展覧会タイトルにあるように、もの言わぬ物が語りかけることに耳を傾けることが、静物画を鑑賞するということなのかな。

声高に何かを主張する人の声は嫌でも耳に入ってきますが、小さな声や沈黙に耳を傾けるのは難しい。

美術作品にしても、大きかったり、派手だったりするととてもインパクトが強くて、ある意味分かりやすい(別に大きかったり、派手だったりする作品を批判する気はないです。好きな作品もたくさんあります)。

でも、パッと見たところ、よく分からないような作品を前にすると投げ出す人がいて悲しい気持ちになることがあります。ちょっと立ち止まって向き合う、じっくり考えるっていう行為はすごく貴重だと思うから。そして考えた結果に正解とか不正解とかないし、「分からない」のまま許容されるっていうのが芸術の特権だと思います。

さて、そんな物・語展は7月3日までです。

福岡市美術館は大好きな美術館ですが、建物の改修のため8月末から2年半の休館に入るそうです。2年半も行けないなんてとてもさみしい。

ですがその分、リニューアル前に何でもやるぞ!という強い意気込みの展覧会や企画が目白押しです。

休館前にもう一度行きたいんだけど、行けるだろうか・・・。

Featured Posts
Recent Posts
Search By Tags
bottom of page